カカポはそのかわいい見た目とは違い、繁殖に関してはかなり特殊です。

カカポの繁殖には、大きく3つの特徴があります。

  1. リムの実が豊作の年だけ繁殖が始まる
  2. オスが求愛し、メスが選ぶ「レック方式」
  3. 子育てはメスがひとりで担う

このような厳しい条件があるため、個体数の回復がとてもゆっくりです。

だからこそ、繁殖が確認される年はとても貴重

この記事では、この3つのポイントを中心に、カカポの繁殖についてわかりやすくご紹介します。

カカポは毎年繁殖するの?

カカポは毎年繁殖するの?

出典:Conservation Blog

カカポは、毎年かならず繁殖する鳥ではありません。

春になると毎年のようにヒナが生まれる鳥もいますが、カカポは少し違います。

繁殖が起こるのは、森の食べ物が十分にそろった年だけ

主食のひとつであるリムの木の実がたくさん実る「当たり年」に限って、はじめて繁殖が始まります。

その間隔は、およそ2〜4年に一度

つまりカカポは、毎年増える鳥ではなく、条件がそろったときにだけ繁殖行動を起こします。

リムの実の豊作(マスト)

カカポの繁殖はリムの実の豊作(マスト)の年に行われる

出典:New Zealand Plant Conservation Network

カカポが繁殖を始めるきっかけは、リムの木の実が大量に実る年です。

森の中で特定の木がいっせいにたくさん実をつける現象を、「マスト(大量結実)」といいます。

いわば、森の当たり年です。

この年になると、カカポはようやく繁殖モードに入ります。

なぜマストの年にしか繁殖活動が行われないのか?

それは、メスは卵を産み、ヒナを育てるには、長いあいだエネルギーが必要です。

もし途中で食べ物が足りなくなれば、ヒナを育てきることはできません。

そのため、繁殖前には体に約1kgもの脂肪をたくわえることもあります。

だからこそ、十分な食料が見込める年でなければ、カカポはそもそも繁殖に踏み切らないのです

繁殖が始まる時期

リムの実が豊作になった年、夏の始まりである12月ごろになると、オスたちは求愛の準備を始めます。

交尾は主に12月〜1月ごろ

そのあとメスは巣作りに入り、1月〜3月ごろに産卵・抱卵・育雛へと進みます。

マストの年が来ると、森の中で静かにカカポの繁殖行動が始まります。

すべての個体が繁殖できるわけではない

ただし、リムが豊作だからといって、全員が繁殖できるわけではありません。

成熟していること、そして十分な体重と体調が整っていることが条件になります。

とくにメスは、体にしっかり脂肪をたくわえていなければ産卵できません。

栄養が足りなかったり、体調が万全でなかったりすると、その年は繁殖を見送ります。

つまり、マストの年=全員が繁殖できる年ではないということ。

こうして見ると、繁殖のタイミングは自然に左右されますよね。

でも、もうひとつ大事なのが「どのオスが選ばれるか」という仕組み。

ここからが、カカポらしい繁殖の特徴です。

カカポの繁殖方法「レック」とは?

カカポの繁殖方法「レック」とは?

出典:Kakapo Recovery Facebook

リムの実が豊作になり、繁殖の条件がそろうと、いよいよパートナー探しが始まります。

その方法が、「レック(lek)」と呼ばれる求愛システムです。

多くの鳥はつがいになりますが、カカポはちょっと違います。

オス同士が森の中の決まった場所に集まり、メスがその中から相手を選ぶ。

そんなめずらしいレック方式をとります。

レックはオスが集まり、メスが選ぶ方式

レックでは、オスが森の中にそれぞれ「求愛の場」を作ります。

そこでオスたちは鳴き声でアピールを続けます。

やって来たメスは、その声やコンディションを見極めながら、交尾相手を選びます。

最終的に選ぶのはメス

だからこそ、レックに参加したからといって、すべてのオスが繁殖できるわけではありません。

森の中では、静かだけどシビアな選抜が行われているんです。

オスはボウル(くぼみ)を掘って待つ

オスは森の通り道や、少し開けた場所に「ボウル」と呼ばれる浅いくぼみを掘ります。

ただの穴ではありません。

このくぼみは、鳴き声をより遠くまで響かせるための音響装置のような役割を持っています。

オスはその中に入り、じっと待ちながら鳴き続けます。

森の中で、自分の存在をまだ見ぬパートナーに知らせるために鳴き続けるなんて、けなげな気がしませんか?

レックでは何が起きている?

レックの場では、オス同士が一定の距離を保ちながら、それぞれのボウルで鳴き続けます。

森の中に、いくつもの「音のポイント」が並んでいるような状態です。

低く響く声を、何時間も何日も発しながら、ただひたすらメスが訪れるのを待ちます。

メスはというと、森の中を移動しながら、その鳴き声を聞き比べます。

そして、もっとも条件が整ったオスのもとへ向かいます。

とはいえ、実際に交尾に至るのはごく一部。

レックは、オス同士の競争と、メスの選択によって成り立つ繁殖システムなんです。

オスが求愛する際の2種類の鳴き声

カカポが求愛する際の2種類の鳴き声

出典:Whakaata te Kapapo

レックの場で、オスがいちばん力を入れるのが「鳴き声」です。

Boom(ブーン)とChing(チン)

この2種類の音が、繁殖の中心を担っています。

オスのカカポたちは、ただ鳴いているわけではありません。

低音と高音、それぞれに役割があり、組み合わせることで「遠く」と「近く」の両方に届く仕組みになっています。

静かな夜の森に、低く響く音と、そのあとに続く鋭い高音。

カカポの求愛は、「音」から始まります。

Boom(低音)の役割

オスはボウルの中に入り、喉元のブーンサックをふくらませて、低い音を響かせます。

Boomの主な役割は、遠くにいるメスへ存在を知らせること

低周波の音は地面を伝わりやすく、森の中にじわっと広く届きます。

広い行動範囲を持つメスに向かって、「ここにいるよ〜」と発信しているイメージです。

「ブーン」の鳴き声を再生できます↑

Ching(高音)の役割

Boomを20〜30回ほど繰り返したあと、オスは高く澄んだ音を出します。

それがChingです。

Boomは遠くまで届きますが、どこから鳴っているのかが分かりにくいという特徴があります。

Chingは、方向性のある高い音で、メスに正確な位置を知らせる役割を果たしていると考えられています。

遠くまで存在を伝え、近くで場所を特定させる。

BoomとChingは、セットで機能する「戦略的な音」なんです。

「チン」の鳴き声を再生できます↑

  • Boom:遠距離への存在アピール
  • Ching:近距離での位置特定

どれくらい鳴く?

カカポの鳴き声は、数分で終わるようなものではありません。

求愛シーズンに入ると

  • 約8時間
  • ほぼ毎晩
  • それが2〜3ヶ月続くことも

想像してみてください。

静かな森の中で、同じ場所から、低い音が何時間も響き続ける様子を。

これは偶然の行動ではありません。

長い時間をかけて、メスの選択を待ち続ける繁殖戦略なんです。

レックは、音を使った持久戦とも言われます。

かわいい姿のカカポの求愛は、実は忍耐が必要な真剣勝負なんです。

求愛ダンスは本当の繁殖行動?

カカポの求愛は、よく「求愛ダンス」として紹介されます。

とくに有名なのが、次の動画です。

まゆみ
まゆみ
体を上下に動かしたり、相手にしがみついたりして、踊っているように見えますよね。

ただ、ここは少し整理しておきたいところです。

この動画の行動=カカポの求愛の本質、というわけではありません

映像はとても印象的ですが、自然界での典型的な繁殖の姿をそのまま映しているわけではないんです。

先ほど紹介したように、自然の中での本来の求愛は次のふたつの方法から成り立ちます。

  • レックという「求愛会場」
  • Boom/Chingによる「音のアピール」

つまり、カカポの繁殖はダンスが主役ではなく、森に響く音と、メスによる選択という構造によって成り立っているんです。

動画はかわいいですが、本当の求愛行動は、もっと静かで戦略的な仕組みの上に成り立っていると言えます。

交尾からヒナ誕生までの流れ

カカポ交尾からヒナ誕生までの流れ

出典:Conservation Blog

レックでメスがオスを選ぶと、交尾が行われます。

ただし、交尾が終わるとオスの役割はそこで終了

そのあとの巣作り・抱卵・育雛は、すべてメスひとりで行います

ここからは、繁殖の流れを見ていきましょう。

卵の数と産卵時期

カカポのメスが産む卵は1〜4個が多く、平均は2〜3個程度とされています。

卵は一度にまとめて産むのではなく、2〜3日おきに順番に産卵しますよ。

繁殖期は、リムの実が豊作となった年の1月〜3月ごろ(ニュージーランドの夏)が中心です。

  • リムの実が豊作になる
  • レックで交尾
  • 数日おきに産卵

こうして、ようやくヒナが生まれる準備が整います。

抱卵〜巣立ち

カカポのひなたち

出典:Conservation Blog

カカポは、子育を母親がすべて担います

抱卵期間は約30日。

ふ化したヒナは、約10〜12週間で巣を離れます。

でも、ここで完全に独立するわけではありません。

巣立ち後も母親は給餌を続け、最長で約6ヶ月世話をすることがあります。

1回の繁殖にかかる時間とエネルギーは、想像以上に大きいもの。

ですので、カカポはたくさん急に増えることが難しい鳥なんです。

なぜカカポは増えにくい?

ここまで読んで、「この繁殖の仕組みだと増えにくいよね…」と感じたのではないでしょうか?

カカポの個体数が増えにくい最大の理由は、繁殖活動の頻度が少なく、負担が大きいからです。

増えにくい理由を整理すると…

  • 繁殖できるのはリムの実が豊作の2〜4年に一度
  • すべての個体が繁殖行動できるわけでない
  • レック方式で、実際に交尾できるオスは一部のみ
  • 子育てはメスひとり

さらに、卵を複数産んでも、すべてがふ化するわけではありません。

また、ふ化しても、すべてが無事に成長するとは限りませんよね。

カカポは、条件がそろったときに少しずつ増えていく鳥なんです。

だからこそ、保護はどうしても長期戦になります。

なぜカカポはこのような繁殖方法なの?

なぜカカポはこのような繁殖方法なの?

出典:Kakapo Recovery Facebook

カカポは長いあいだ、陸上哺乳類の天敵がいない環境で進化してきました。

急いで大量に個体数を増やす必要がなかったため、繁殖回数が少ない鳥になったと言われています。

つまり、現在のカカポの繁殖の難しさは、種としての短所や弱さなどではなく、長い進化の結果なんです。

近年の繁殖シーズンと個体数の動き

カカポは、毎年ヒナが生まれる鳥ではないからこそ、繁殖が確認された年は、それだけで特別です。

たとえば2022年は、リムの実が豊作となり、多くのヒナが誕生しました。

このシーズンは個体数の回復に大きく貢献し、2019年の200羽から252羽に増えました。

まゆみ
まゆみ
近年の中でも重要な繁殖年となりました。

その後は繁殖がない年もありましたが、直近の繁殖シーズン(2026年)でも再びヒナの誕生が確認されています。

数年に一度しか訪れない森の当たり年のたびに、少しずつ数が回復しています。

保護の考え方も少し変わってきている

これまでの保護は、とにかく数を増やすことが最優先でした。

人工孵化や補助給餌など、人の手をかけながら個体数を回復させてきた歴史があります。

でも今は、少しずつ目指す方向が変わってきているそうです。

大切にしているのは、自然の中で安定して繁殖できる状態

人のサポートがなくても、世代を繋げていける。

カカポをそんな自立した個体群に近づけることが、次のステップだということです。

よくある疑問

カカポの繁殖について、よく検索される疑問をまとめました。

要点をまとめて確認したい方はこちらからどうぞ。

レックとは?

オスが一定の場所に集まり、メスが相手を選ぶ繁殖方式のことです。

カカポは森に「ボウル」と呼ばれるくぼみを作り、鳴き声でメスを呼びます。

求愛は本当に「ダンス」なの?

カカポの求愛の本質は、レックと鳴き声です

有名な動画はかわいい求愛の印象が強いですが、自然な繁殖の中で行われる行動とは違うんです。

ヒナはいつ生まれる?

ヒナが生まれるのは、2〜4月ごろ(NZの晩夏〜秋)

ただし、繁殖は毎年起こるのではなく、マスト年の2〜4年に一度です。

個体数は増えている?

一時は100羽を下回りましたが、現在は230羽超まで回復しています。

ただし増え方はゆるやかで、長期的な保護が続いています。

まとめ

カカポの繁殖方法をわかりやすく解説

出典:Kakapo Recovery Facebook

カカポの繁殖は、見た目のかわいらしさやのんびりした感じからは想像できないくらい、仕組みが特殊です。

最後に、この記事のポイントを整理しておきますね。

カカポの繁殖のポイントこの3つ。

① 繁殖は毎年起こらない(2〜4年に一度)
カカポは、リムの実がたくさん実る「マスト年」でないと基本的に繁殖しません。

だから、繁殖が確認される年そのものが貴重です。

② 求愛の中心は「レック」と「音」
オスが森に「求愛会場」を作り、Boom(低音)Ching(高音)でメスを呼びます。

そして最後に選ぶのはメス。

ここがカカポらしい特徴です。

③ 交尾のあとはメスがワンオペ育児
交尾が終わったら、オスはそこで役目終了。

巣作り・抱卵・育雛まで、ぜんぶメスがひとりでやります。

この負担が大きい構造も、カカポがゆっくりしか増えない理由のひとつです。

こうして見ると、カカポが増えにくいのは、もともと「ゆっくり増える」前提で進化してきた鳥なんだな…というのが伝わったと思います。

だからこそ、繁殖のニュースが出る年は、本当にうれしいし、貴重なんですよね。

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