ニュージーランドにいても日本の情報がどんどん入ってくるのはありがたいことです。
そんな中、最近は心が痛むニュースが相次いでいますが、報道のしかたや記事の内容に大きなショックを受けることもあります。
それはNZに住んでいるから、敏感になって気づくことなのかもしれません。
この記事では、有名人の死に関する報道について、個人的に気になったことをまとめたいと思います。
センセーショナルな日本の報道に驚いた
今回私は、三浦春馬さんや竹内結子さんの訃報に関し、目に飛び込んでくるネットニュースのタイトルや内容にはっきりいってショックを受けました。
そこで知ったのが、「ウェルテル効果」というものです。
ある人物の自殺の発表により自殺者数が増加すること。
いろんな研究で、特に有名な人の自殺報道のあり方によっては、模倣して自ら命を絶つする人が増えることが示されています。
具体的な影響力や日本での事例を別の記事にまとめているので、よかったらご覧ください。
調べてみて、次のように感じました。
多くの人に大きな影響を与える死の報道。
そこで、有名人の自殺報道にはどのようなルールがあるのかを確認してみました。
有名人の自殺報道に決まりはある?ニュージーランドと日本を比較
まず、ニュージーランドにおける著名人の自殺報道に関するルールを紹介します。
ニュージーランドの自殺報道に関する法律とは?
ニュージーランドでは自殺や自殺の疑いがある場合、法律により公にしてはいけないことが次のように決められています。
- 自殺の具体的な手段や、疑われる手段の公表。
- 自殺手段・疑われる手段を暗示する詳細(自殺場所など)の公表。
- 検視官が死因が自殺であるという見解を公開する前に自殺と報道すること。(自殺の疑いがあるという報道はできる)
参考: New Zealand Legislation:Section 71 of the Coroners Act 2006
ニュースやメディアだけでなく、フェイスブックなどのSNSも含めて公にしてはいけません。
大切なポイントは、以下のリスクを犯してはいけないという点でしょう。
またNZ保健省は次のようにも述べています。
- 特定の自殺を報道するにあたって慎重にならなくていけません。
- 得に著名人の自死についてはあと追い自殺をする人が増えるリスクがあります。
- また亡くなった家族や親しい友人においても自殺のリスクがあります。
- ひとりの自殺がコミュニティーの中で連鎖する可能性があります。
参考:ニュージーランド保健省:Talking about suicide
また法律ではありませんが、自殺をメディアで報道することについての資料があるので、いくつかご紹介しますね。
- センセーショナルな記事タイトルや生々しい写真を避け、見る人に与える印象を考慮する。
- 死の原因を短絡的にひとつに絞らない(例:〇〇さんがなくなったのは失業したからです)自殺の原因は通常複雑なもの。
- メディアに関わる人自身のトラウマになることもあることを知っておく。
- 文化や宗教により自殺や死への考えが違うことを考慮する。
- 事実だけを伝え、内容が偏った報道をしない。
- 苦しみ悩む人にオンラインヘルプや支援機関の情報を伝える。
- 「自殺について話してはいけない」など、自殺に関する間違った考えを正す。
- 最近類似の件があった場合、関連付けてよいのか慎重に判断する。
- 子供とソーシャルネットワークの危険性を話し合うよう親にすすめる。
参考:NZ保健省:Reporting Suicide: A resource for the media
もちろん、ニュージーランドでも有名人が自殺で亡くなったことをニュースとして伝えることはあります。
でも原因の可能性をみんなで追求したり、関係者のインタビューを流したりすることはありません。
最近、NZの有名なニュースキャスターが自ら命を絶ちました。
控えめな報道ではありましたが、私を含め多くの人がショックを受け、何らかのトラウマになったと思います。
そんな環境が当たり前の中で、日本の自殺報道はとても興味本位な内容で、センセーショナルにうつりました。
日本には規制がないのでしょうか?続いてご紹介します。
日本の「自殺予防メディア関係者へのお願い」の内容は?
今年の有名人の自殺報道のなかには、亡くなった場所や手段を明らかにした生々しいものもありました。
テレビでいつも見ている人だったからこそ、傷つき影響を受けた人がいることは簡単に想像がつきます。
また、繰り返しニュースになり、いろんな憶測が書かれていることで、次のような想像をしてしまった人もいるのではないでしょうか?
- どんな悩みがあったんだろう?
- 死ぬ前はどんな気分だったんだろう?
センセーショナルな記事タイトルが踊る日本のメディアにはルールがないのかな?
と思ったら、厚生労働省が次のような、しっかりわかりやすい手引書や情報を公開していました。
大きな理由は、まさに以下のとおりです。
メディアが気をつけることは「やるべきこと」と「やるべきでないこと」として紹介されています。
- 有名人の自殺を報道する際には、特に注意すること。
- 支援策や相談先について、正しい情報を提供すること。
- 日常生活のストレス要因または自殺念慮への対処法や支援を受ける方法について報道すること。
- 自殺と自殺対策についての正しい情報を報道すること。
やってはいけないことには、次のような項目があげられています。
- 報道を過度に繰り返さないこと。
- 自殺に用いた手段について明確に表現しないこと。
- 自殺が発生した現場や場所の詳細を伝えないこと。
- センセーショナルな見出しを使わないこと。
- 写真、ビデオ映像、デジタルメディアへのリンクなどは用いないこと。
さて、こんなにわかりやすく書かれているのに、実際には多くの記事で無視されているのはなぜでしょうか?
- ガイドラインを読んでいない?
- ネット記事が読まれて広告からの収入があればいい?
- 視聴率が取れればいい?
- 雑誌が売れればいい?
著名人の自殺報道についてのまとめ
ニュージーランドが自殺の報道に厳しい大きな理由は、NZの自殺率、特に若者の自殺率の高さだと思います。
世界の中でも、NZはいじめやうつの割合が多いといわれています。
NZの自殺問題は、これからも引き続き国の大きな課題なんです。
ですので、
そして特定の自死報道は、引き続き事実だけを伝えるようするべきです。
また、
ちなみに、自殺予防に関して報道すると自殺を防ぐ可能性が高まることを「パパゲーノ効果」といいます。
パパゲーノ効果に関してもう少し詳しく、こちらの記事で紹介しています。
以上、最近の自殺報道やNZと日本のメディアの取り扱い方の違いについて感じたことをお伝えしました。
読んでいただき、ありがとうございます。
【日本の支援窓口の一例はこちらです】
- 1737:1737に無料テキストか電話をすると、いつでもカウンセラーがでます。
- Healthline:0800 611 116
- Lifeline:0800 543 354 か 09 522 2999か テキストでHELP と 4357に送る
- Depression Helpline: 0800 111 757 (24/7) か 4202 にテキスト
- Youthline: 0800 376 633 (24/7) か無料テキスト 234 (8am-12am)
Eメール: talk@youthline.co.nz - Kidsline (5歳〜18歳): 0800 543 754 (24/7)
- Rainbow Youth: (09) 376 4155
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