この記事では、ニュージーランドの安楽死に関する法案について、内容や国民投票の時期、合法化の決定条件についてご紹介します。
最近NZのニュースでよく「Euthanasia(ユーサネイジア)」という言葉を聞くけど、どういう意味?
Euthanasiaとは「安楽死」という意味の単語です。
以前からNZでは医師により末期患者を苦痛から解放する安楽死・尊厳死について議論されていました。
そして、この度ついに国民投票により合法化されるか否かが決定します。
そこでこの記事では、ニュージーランドの安楽死法案に関連する項目をご紹介します。
(参考にしたサイトは最後にまとめて掲載しました。)
ニュージーランドで最近話題の安楽死法案とは?
最近テレビでもよくニュースになっている、ニュージーランドの安楽死法案は
エンド・オブ・ライフ・チョイス法案
と呼ばれます。
死が迫る末期患者に対し、安楽死を合法化する法案です。
当法案で安楽死を選択するには、患者は以下6つの条件すべてを満たす必要があります。
- 18歳以上
- ニュージーランド国民か永住者
- 不治の病で余命6ヶ月以内
- 進行中の重大な身体能力の衰えがみられる
- 緩和できない耐えがたい苦しみを経験している
- 安楽死の情報を理解し自分で決定できる
当法案では、NZ国民や永住者以外が外国から来てニュージーランドで安楽死を選ぶ、ということはできません。
また、精神的な病に苦しむ人、高齢者、障害者というだけでは条件を満たさないことも記されています。
内容をよく見ると、実際には医師が助ける死、日本でいうところの積極的安楽死や医師による自殺ほう助に当たるようです。
出典:東大新聞オンライン
ちなみに、日本で議論される安楽死や尊厳死は主に延命治療の停止(消極的安楽死)であるところがNZとの大きな違いといえるでしょう。
今回の案で説明される具体的なプロセスは、次のようになります。
- 不治の病で余命6ヶ月以内の患者が主治医に相談する。
- 主治医ともうひとりの医師、合計ふたりの医師から同意が得られれば安楽死を選べる。
- 医師により薬が提供され医師の前で自分で投与する、もしくは医師が薬を投与する。
以前「尊厳死法案」と名付けられた「デス・ウィズ・ディグニティ法案」が発案されました。
しかし、国会で1995年、2003年と2回に渡って否決されています。
今回の「エンド・オブ・ライフ・チョイス法案」はアクト党のリーダーであるデイビット・シーモワー議員により、2015年10月に提出されました。
当法案は、2017年以降何度も議会で取り上げられていましたが、2019年に可決。
議会の審議(「読会」といいます)では以下のように3回に渡って賛成が上回り、可決されました。
時期 | 賛成 | 反対 |
---|---|---|
2017年12月 | 76 | 44 |
2019年6月 | 70 | 50 |
2019年11月 | 69 | 51 |
そして発案から5年をへて、今回ついに国民投票の運びとなります。
特筆すべきは、ニュージーランドが
になる点です。
では投票する人々の意見はどうでしょうか?
続いてみてみましょう。
安楽死法案に対するニュージーランドの人々の反応は?
さて、NZ国会を通過した安楽死法案ですが、この国の人々はどのように思っているのでしょうか?
世論調査では、以下ような結果が出ていますのでご紹介します。
時期 | 対象人数 | 賛成 | 反対 |
---|---|---|---|
2019年4月 | 1,341人 | 74% | 19% |
2019年7月 | 1,003人 | 72% | 20% |
2019年11月 | 1,521人 | 70% | 30% |
2020年2月 | 1,004人 | 65% | 25% |
2019年〜2020年4回すべての調査で、賛成が大きく上回っているといえます。
ところで、最近ニュージーランドでは「緩和ケア(Palliative Care)」という言葉もよく聞くようになりました。
人生を脅かす病気による問題に直面している患者、またその家族や介護者個人の人生や生活の質(QOL、Quality of life、クオリティ・オブ・ライフ)を改善する方法。
参考:WHO
具体的には以下のようなアプローチで、苦しみの予防、痛みの緩和やサポートをします。
- 身体的
- 心理的
- スピリチュアル的
- 文化的
ニュージーランドでは「人生をいかに終えるか」という問題により大きな関心が出てきているといえるのでは、と感じます。
さて、この安楽死法案は2020年10月17日(もとは9月19日でしたが、コロナの影響で延期になりました)の選挙に合わせ、国民投票が行われます。
現在は賛成派と反対派により、賛成キャンペーンや反対運動が行われているさなかです。
安楽死法案に関する今後の流れは?
さて、国民投票は2020年の10月17日(もとは9月19日でしたが、コロナの影響で延期になりました)に行われます。
国民・永住者は投票権があるので私自身も投票に行きますが、責任が重い!
今から法案の内容をもっと把握しないといけません。
そして、国民投票では次のように質問されることがすでにわかっています。
Do you support the End of Life Choice Act 2019 coming into force?
あなたはエンド・オブ・ライフ・チョイス法の施行を支持しますか?
私たちが選ぶ、ふたつの回答は
Yes, I support the End of Life Choice Act 2019 coming into force.
はい、私はエンド・オブ・ライフ・チョイス法の施行を支持します。
もしくは
No, I do not support the End of Life Choice Act 2019 coming into force.
いいえ、私はエンド・オブ・ライフ・チョイス法の施行を支持しません。
もし投票数の半数以上が賛成なら、12ヶ月後に法律が施行されます。
もし投票数の半数以上が反対なら、法律は施行されません。
どうなるかわかりませんが、いままでの世間調査では半数以上が賛成なので、私は合法化になるのでは?と思っています。
安楽死が認められている国は?
2020年7月現在、安楽死が合法の国はどこでしょうか?
リストにまとめましたのでご覧ください。
- オーストラリアのビクトリア州、西オーストラリア州
- ベルギー
- カナダ
- コロンビア
- ルクセンブルク
- オランダ
- スイス
- アメリカの9つの州(カリフォルニア、コロラド、オレゴン、バーモント、ニュージャージー、ワシントン、ハワイ、モンタナ、メイン)とコロンビア特別区
お隣オーストラリアの一部ではすでに合法です。
私は意外に多く感じびっくりしましたが、ニュージーランドが追加される日もそう遠くないかもしれません。
ニュージーランドの安楽死法案に関するまとめ
アメリカの例では、安楽死を選んでも実際は最期まで薬を投与しなかった人もいるそうです。
選択がある、いざ耐えられなくなったら使える、という気持ち的に救われる点もあるのではないでしょうか。
その一方で、悪用されるようなことは決して起きてはなりません。
ニュージーランドではいよいよ合法化になるかどうか、という時期に差しかかっています。
そして、決定権はニュージーランド国民と永住者の手に。
法案の内容をしっかり理解し、10月の国民投票に望みたいと思います。
続報があれば記事で取り上げますので、興味をお持ちの方はぜひ当ブログをフォローしてくださいね。
当記事は以下のサイトを参考にしました。
- End of Life Choice referendum
- Assisted dying: New Zealand
- Euthanasia in New Zealand
- 2020 New Zealand euthanasia referendum
- Death with Dignity
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